Japan Cooked-rice Association
ごはんソムリエ講師 小田宗宏
2026/06/15
文献番号B-23
訳者よりひとこと
レジスタントスターチ(RS)と呼ばれる老化でんぷんがある。通常のでんぷんと比較し消化酵素による分解を受けにくい。そのため、消化されないまま大腸に届き、食物繊維と同様な働きをするといわれ、ヒトへの健康効果が期待されている。RSはアミロースが関わる物質(炭水化物)であり、米の品種によりアミロース含量が異なることや、また、同じ品種であっても、炊飯後の保存条件によってもRS含量に違いが生じることが知られている。RSが食物繊維としての機能を有することが期待されているものの、有効性を示す必要量など定量的な知見はないと思われる。ここでは、まず、RSにも多様性があり、また、RSのタイプによっても生理的な効果に違いがあることを紹介したい。
文献要旨(訳)
ヒトの腸内細菌叢に影響を及ぼすレジスタントスターチ(RS)を利用した食事戦略を系統的に発展させるためには、腸内細菌の構成細菌や細菌数の変動に影響を及ぼす異なったタイプのRSの作用を明らかにしておくことが必要である。本研究の目的は、RSのタイプ2(RS2)とタイプ4(RS4)の腸内細菌叢に及ぼす影響を知ることにある。
ボランティア10名がRS2、RS4、あるいは未変性のでんぷんを含むそれぞれのクラッカーを3週間摂取するという内容の二重盲検クロスオーバー試験(注1)が行われた。腸内細菌の分子生物学的手法による菌種の特定からは、RS2、RS4の両者は、腸内細菌全体に及ぼす影響は異なるが、特定の構成細菌の変動をもたらした。RS4は門レベル(注2)の変化をもたらし、Actinobacteria とBacteroidetes を増加させ、一方、Firmicutes を減少させた。種レベル(注2)では、RS4はBifidobacterium adolescentisとParabacteroides distasonisを増やし、一方、RS2はRS4と比較しRuminococcs bromiiとEubacterium rectaleの割合を高めた。RS4による構成細菌の変化はいくつかの分類(階級)レベルでは大きな変化があった。例えば、ボランティアの3名ではbifidobacteriumが10倍増え、構成細菌の18-30%を占めることになった。RSに対する応答とその強度は個人により異なるが、それらはRSを消費する(摂取量)と関係しており可逆的でもある。
これらの結果から、RS2とRS4は、腸内の構成細菌に対する影響には違いが認められ、それはRSの化学構造が腸内細菌による利用性に影響を及ぼしていることを示唆するものである。よく設計された機能性炭水化物の活用により、特定の腸内細菌をターゲットに管理することが可能となる。RSへの応答が個人により異なることを考慮すると、そのような戦略は、むしろ個別対応を目指した取り組みにすることが望ましいと考えられる。
注1:二重盲検クロスオーバー試験
効果を検証したい成分を含む試験食と含まない試験食(プラセボあるいは偽薬と呼ばれ、見かけ上、両試験食には違いがみられない)を、各被験者は摂取の時期をずらして摂取する試験する方法であって、被験者は、どちらの試験食を摂取しているかは知らされていない。
注2:門レベル、種レベル
細菌を分類する際に用いられる階級をいい、大きな(広い範囲)分類階級と小さな(狭い範囲)分類階級がある。門レベルは、種レベルより大きな分類階級である。
雑誌名 : PLoS ONE 7 November 2010 5(11) e15046
タイトル : Resistant Starches Types 2 and 4 Have Differential Effects on the Composition of the Fecal Microbiota in Human Subjects
訳/小田宗宏(炊飯HACCP審査委員)