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関連図書・参考資料

=日本人2型糖尿病患者を対象とした「緩い低炭水化物食」による食事介入の効果(36か月間の観察研究)=

ごはんソムリエ講師 小田宗宏

2025/12/24

文献番号B-07

訳者よりひとこと

近年、肥満や糖尿病を予防するための「低炭水化物食」に関心が向けられている。しかし、1日の総摂取エネルギー量に占める炭水化物のエネルギー量には適切な割合があるとの調査報告もあり、その割合が多くてもまた少なくても健康にとっては好ましくない。炭水化物量が少ない場合、エネルギー不足分を補う別途の栄養素の摂取が必要となり、タンパク質や脂質をより多く摂ることになる。そのため、腎機能や脂質プロフィールに考慮が必要となる。

 今回、紹介する論文は、日本人の2型糖尿病患者を対象として「緩い低炭水化物食」による介入試験に関するものであって、長期間(36か月)摂取による安全性と有効性を検証するものである。解析結果から、「緩い低炭水化物食」は、長期間摂取でも安全で有効であるとの結果を得ている。

 このような結果をもとに、健全な方が予防的に「低炭水化物食」を食事に取り入れる場合には、やはり医師の指導の下で実践されることを望みます。「低炭水化物食」摂取における副作用もいろいろ報告されていますので。

文献要旨(訳)

日本人の2型糖尿病患者の血糖値や脂質のプロフィール管理のためには、カロリーを制限するよりもカロリーを制限しないで「緩い低炭水化物食(註1)」(以下、mLCD)を摂った方がより有効であったことをすでに報告している。今回は、mLCDによる介入が長期間にわたり継続できるか、有効であるか、安全であるか、などを検討するために、36か月間の観察研究を行った。この研究では、200名の2型糖尿病患者が登録され、mLCDへの対応方法を指導した。外来診療において食事介入の前と後で、以下に示すパラメーターの比較を行った。パラメーターには、ヘモグロビンA1c、体重、脂質プロフィール(総コレステロール、LDL-・HDL-コレステロール、中性脂肪)、収縮期・拡張期血圧、肝機能(AST/GOT、ALT/GPT)、腎機能(尿素窒素、クレアチニン、eGFR/推算糸球体濾過量)などが含まれる。

登録者200名中、観察期間中に追跡が可能であった157名から得られた結果を解析したところ、ヘモグロビンA1cは、8.0から7.5% へ、ALTは29.9から26.2IL/Lへと低下した。また、HDL-コレステロールは58.9から61.2㎎/dLへ、尿素窒素は、15.9から17.0に上昇した。これらのことから、mLCDの摂取は、長期間にわたり安全であり、ヘモグロビンA1c、脂質プロフィールや肝機能などの改善効果が持続した。

註1:緩い低炭水化物食

    Moderately Low Carbohydrate Diet(mLCD)の日本語訳である。この食事における炭水化物摂取量は、1回の食事当たり20-40g、1日当たり70-130gであり、これに間食として10gの炭水化物の摂取が認められている。

 

訳/小田宗宏(炊飯HACCP審査委員)

出典:

雑誌名  :Nutrients 2018, 10, 528

著者・所属:Mariko Sanada, et al. , Kitasato Institute Hospital, Diabetes Center

タイトル :Efficacy of a Moderately Low Carbohydrate Diet in a 36-Month Observational Study of Japanese Patients with Type 2 Diabetes