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コラム・記事

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知っておきたい『炊飯の調理科学』
第1回 米の浸漬温度とごはんの味

ごはんソムリエ講師 新井映子

2026/07/15

 ごはんソムリエ認定講習の第2課程で「第1章 炊飯の科学」を担当している新井映子です。本コラムでは、時間の関係上講義の中でお話しできなかった内容について、調理科学の視点から補足・解説していきたいと思います。早速ですが、第1回は米を浸漬する際の水温の影響について、著者の実験結果を基に解説します。

 講義でもお話ししたように、米は乾物のため、ふっくらと炊き上げるには加熱前に米を常温(20℃くらい)で30分以上水に浸け、中心部まで吸水させておく必要があります。その際、水温の高低が吸水速度に影響を与えることはお話しました。それに加えて、浸漬温度はごはんの味、特に甘味に影響を与えるといわれています。

 図1をご覧ください。この実験は、収穫後1年近く経過したコシヒカリを1~60℃の水に1時間浸漬後、そのまま炊飯したごはんについて、米粒表面のおねば部分と米粒内部とに分けて、それぞれに含まれる遊離糖量とその組成を調べた結果です。

 おねば部分では、60℃で浸漬した米が最も遊離糖量が多くなりました。一方、30および40℃浸漬も、常温の20℃浸漬よりも遊離糖量は増えています。また、60℃浸漬ではグルコース(ブドウ糖)、30および40℃浸漬ではマルトース(麦芽糖)やマルトオリゴ糖類の増加が認められます。そのため、60℃浸漬では米に内在するグルコース生成酵素のα-グルコシターゼが、30および40℃浸漬ではマルトースやマルトオリゴ糖を生成するα-アミラーゼが作用し、米の主成分であるでんぷんから甘味となる遊離糖を切り出したものと推察されます。この現象は、各酵素の活性最適温度とも概ね一致しています。なお、米粒内部は米粒表面よりも酵素量が少ないため、遊離糖の増加はおねばほど顕著ではありませんでした。

 以上のことから、米はやや高い水温で吸水させると、ごはんの甘味がよく引き出されることが確認できました。市販の電気炊飯器の温度プログラムには、この効果を積極的に利用したものもあります。ただし、米の品種や新古によって米の内在性糖質分解酵素活性には差があります。甘味の強いごはんを炊飯したいときには、米の選び方や浸漬温度など、何度か予備実験を行って条件設定するとよいでしょう。なお、遊離糖が多く含まれるごはんは、保存中にアミノ・カルボニル反応(遊離糖とアミノ酸などのアミノ化合物による褐変現象)が進行しやすく、保温中にごはんが黄色く変色することがあります。そのため、保温時間が長くなる場合には注意が必要です。 

(次回は、水温とごはんのテクスチャーについて)