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コラム・記事

炊飯工場での経験談 第1回「無洗米の浸漬・吸水」

ごはんソムリエ司会者 三橋昌幸

2025/12/24

戦中・戦後、日本は米不足の状態が続いていましたが、1970年頃には米の生産が増え、米不足は解消され、今度は米が余る状況になりました。そこで国策として1975年から学校給食にごはんを提供するようになりました。それまではパンの提供でしたが、パンは外部の会社から提供していたこともあり、ごはんも外部に依頼することになりました。

これにより炊飯ビジネスが始まったといえます。

私は、1975年に学校給食にごはんの提供を始めた時から、ずーっと炊飯ビジネスに携わっていますが、その中で得た経験・知見等をお伝えしていこうと思っています。

第1回「無洗米の浸漬・吸水」

無洗米を水に漬ける際、米と水を適量、炊飯釜に入れ、その後サーと洗ったり、かき混ぜたりしない場合には、普通精米に比べ初期の吸水が遅く、短い吸水時間では炊上がったごはんは吸水不足となり、本来のごはんの味がでません。ごはんソムリエのテキストにあるように、ごはんは米と水だけを原料としており、加熱前に米に十分な水分を浸透させることが美味しいごはんを炊くための前提条件となっています。

 

大型炊飯工場では、約1~2時間の浸漬時間を取っているのが一般的で、炊上がり後12~36時間後に食されることが多くなります。炊き立てのごはんに比べると上手く炊いたか否かで品質の差は、大きく出てきます。実際にあったことですが、無洗米を洗う工程無しで炊飯した結果、お客様から品質不良として受入許可が得られなかったが90分浸漬した場合はOKであった。その後サーと無洗米を洗う工程を加え、品質OK納品となりました。

 

無洗米精米機の大手は、「トーヨーライス」「サタケ」ですが、いずれも米と水を炊飯釜に入れた後、軽く攪拌することを推奨しています。

無洗米を単に水に漬けた場合、米の割れ目等にある気泡が押し出されるまで水の浸透が進みにくくなるため、それを回避するために、釜に水と米を入れた後、釜底から全体的に軽く攪拌し、気泡を出す作業になります。これにより吸水に関し、無洗米と普通精米とを区別する必要はなくなるといえます。

無洗米を炊く場合には、以上のような注意が必要です。「米についている気泡」を思い浮かべ、ちょっとしたひと手間で、ごはんを美味しく召し上がってください。

 

無洗米と普通の精米を、水に漬けた後の様子を表した写真では、米内部から気泡が出てくる状況が判ります。(但し、全ての無洗米についてのテストではないことを申し添えます。)

今後、大型炊飯工場の経験から テーマ(予定)

・気圧と火加減  

・浸漬水温度 

・「炊飯の格言」と現状の違い? 

・お客様の反応(いつもと違う)

・炊飯設備投資(現状と将来の困り事には差がある)

無洗米の表面の様子 (写真の説明)

①3回洗い(攪拌)表面   :無洗米を水の中で3回攪拌した直後の状態

②3回洗い(攪拌)→浸漬後 :無洗米を水の中で3回攪拌した後、30分浸漬した状態

③洗い(攪拌)なし表面   :無洗米を水にそのまま漬けた直後の状態

④洗い(攪拌)なし→浸漬後 :無洗米を水の中で混ぜない状態で、30分経過した状態

(株)サタケより、資料提供いただく

【無洗米の炊飯時の注意点】

米の表面の空気を除去するため、米を水に漬けた時に、「水の中で軽くかき混ぜ」て、米表面を水になじませ、吸水が始まるようにすることが必要